映画予告編の悦楽

映画予告編の魅力をひたすら語っていきます!

「ブラックパンサー」予告 / 高度に計算され尽くしたMCU予告

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「ブラックパンサー」(2018)の予告をご紹介します。

アイアンマン、スパイダーマンなどを擁するマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第18作目。MCU初の黒人が主人公となる作品で、アメリカで爆発的なヒットを記録しました。

 

映画『ブラックパンサー』日本版予告編1

https://youtu.be/ufLrXsuspUc

 

 

 

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○高度に計算され尽くしたMCU予告

ブラックパンサーMCUの中でやや特殊な出自で、本作が初登場ではなく、2016年の「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」でお披露目となりました。

そのため単独作となるこの「ブラックパンサー」では、彼が持つ世界観が新鮮さに欠けるように映ってしまうのではないかとなんとなく心配していました。

ですが一発目に発表されたこの予告編で、そんな心配はいらないほど、ブラックパンサーとワカンダ王国がミステリアスに、魅力的に描かれているのがわかりました。もちろん、新鮮さを失わないように「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」では核心を突いた情報は意図的に隠していたのでしょう。

 

前半はたっぷり1分ほどかけて、ある男の取り調べを通してワカンダとその王であるブラックパンサーの秘密を印象付けます。

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後半になると、映像ではワカンダ国の人々や戦闘シーンを描き、ナレーションでブラックパンサーに試練が待っていることが告げられます。このパートは約30秒と短いですが、映像と音声を分けることで、テロップなどには頼らず多くの情報を伝えています。

 

終盤のブラックパンサーが車から車へ飛び乗るシーンは、本編では数ある戦闘シーンの一つなのでしょうが、ブラックパンサーの持つパワーと俊敏性をスマートに表現していて、素晴らしい切り取り方だと思います。

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その直後に現れるロゴの演出は、今まで観た中で一番カッコいい仕上がりになってます。暗闇の中で文字のエッジが光って、ゆっくり全体が浮かび上がる。音楽も相まってミステリアスで洗練された本作のイメージがここだけで十分に伝わってきます。

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通常、ひとつの予告編内でパートごとに2つか3つの音楽が使われますが、今回バックで流れているのは一曲だけです。そのおかげで全体に統一感が生まれ作品の世界観がより鮮明になっています。ヒップホップユニットRun The Jewels” Legend Has It”という曲です。

 

Run The Jewels - Legend Has It (Official Music Video From RTJ3 & Black Panther)

https://youtu.be/vWaljXUiCaE

 

この作品ではキャスト、スタッフにアフリカ系の黒人が多く起用されました。そして音楽も黒人発祥といわれるヒップホップが多く使われ、著名な黒人ラッパー、ケンドリック・ラマーによるインスパイアアルバムが制作されました。

 

ブラックパンサー」の魅力は、アフリカ系民族が持つ伝統的なイメージと、高度な文明を持つ技術先進国としての洗練されたイメージが調和しているところで、この予告でもその2つのイメージがバランスよく表れています。民族衣装をまとった人々や豊かな自然環境を画として多く見せ、技術先進国としてのイメージはRun The Jewelsによるスタイリッシュな挿入歌で強く補っています。ヒップホップといっても、昔ながらのタイプではなく、今の流行を反映した曲を選んだのもそのような狙いがあったんだと思います。

 

全体としてこの予告編は、短い尺の中でも緩急のつけ方が抜群に綺麗で、個人的に最近の中では一番気に入ってます。

 

読んでいただきありがとうございました。