映画予告編の悦楽

映画予告編の魅力をひたすら語っていきます!

「しわ」予告 / どこか心に引っかかる、スペインのアニメーション予告

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「しわ」(2011)の予告をご紹介します。

パコ・ロカによる漫画「皺」を原作とする、スペインのアニメーション映画です。

 

映画『しわ』予告編

https://youtu.be/8fIDtcTXOG0

 

 

 

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○どこか心に引っかかる、スペインのアニメーション予告

この映画は、養護老人施設で認知症に苦しむ高齢者を描いた作品です。

予告も明るいテイストではないですが、どこか心に引っかかるような後味を残す作品です。そういった意味で、映画を印象付けるという予告編の大事な役割を果たしてる優秀な作品といえるでしょう。

 

まず初めに、もう退職したという事実を受け入れられず、食卓でも銀行の支店長としてふるまう認知症の主人公エミリオと家族のやり取りが描かれます。

いら立ち乱暴にスプーンを突き付ける息子の様子や、状況を理解できず困惑するエミリオの表情など、一つ一つ丁寧に描写されています。この部分だけで予告編の尺の3分の1ほど費やしていますが、このシーンのおかげでこの作品のテーマや登場人物の置かれている状況が印象強く伝わってきます。

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その後、入居させられた老人ホームで、同じく認知症を患いそれぞれ妄想の世界に入り込む同居人たちが描かれます。

高齢夫婦の妻が夫の食事の世話をするシーン、言葉はないですが介護の虚しさのようなものが感じられます。

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自分は周りとは違うと信じたいエミリオは、自分の家に帰ると大声で訴えますが、周囲の老人たちは自分の世界に入り込みエミリオの話など聞いていません。

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そして唐突に、施設の職員と思われる女性が吹きならす笛の音で遮られます。どのような意図でこのシーンをタイトルロゴの前に入れたのでしょうか。

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最後はベッドの中で自分を安心させようとするエミリオの、不安そうな表情で締めくくられます。

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聴きなじみのないスペイン語の影響もありますが、独特な画風や、「認知症」という特殊なテーマなど、とにかく異色で記憶に残る作品です。

 

読んでいただきありがとうございました。