「グリーンブック」予告 / 全てにおいて完成度の高い教科書的予告
映画予告編の魅力について語っていきます。
今回は「グリーンブック」(2018)の予告をご紹介します。
ジャマイカ系アメリカ人のピアニスト、シャーリーとイタリア系用心棒のトニーがアメリカ南部を周るコンサートツアーを描いた作品。
2018年のアカデミー賞で作品賞を受賞しました。
【公式】『グリーンブック』3.1(金)公開/本予告
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○全てにおいて完成度の高い教科書的予告
本編を観ると、この予告編が本編の大事な要素を無駄なく自然に配置していることがよくわかります。
最初にトニーがシャーリーとツアーを周ることになった経緯をナレーションも交えてコンパクトに伝えていて、タイトルとなった「グリーンブック」についての説明もちゃんと入っています。また冒頭のこの時点ではトニーも黒人に対する偏見を持っていることが、直接的ではなくても言い方や仕草から表れています。
その後二人の旅が始まります。
ガサツなトニーと、トニーの言動に呆れるシャーリーという対比は、コメディ要素として本編で大事な部分ですが、この予告ではそれを端的に表したカットがいくつか入っており、尺をとることなく表現できています。
トニーの妻にあてた手紙に対してシャーリーがアドバイスする場面がありますが、このようなシャーリーからトニーへの働きかけをちゃんと入れることで、二人が演者と用心棒という立場を超えた関係性を築いていることが伝わってきます。
手紙の中でトニーがシャーリーの実力を認めていることが書かれています。この部分、トニーの口から直接言うのではなく妻による手紙の音読で伝えられていて、自然で上手いなと思います。
また、シャーリーが差別や偏見を受けながらツアーを続ける理由も、本人の口からではなくシャーリーの演奏者仲間から話されます。
そして最高のタイミングで、シャーリーの演奏シーンと音楽のサビが重なります。この予告は細かい構成も上手いし、このような見せ場の作り方も見事だと思います。
流れているのはAloe Blaccによる”I Count On Me”という曲です。
Aloe Blacc - I Count On Me
後半は二人が偏見の中でもシャーリーの音楽を届けようと奮闘するシーンが続きます。シャーリーが周囲からの扱われ方に悩み、雨の中声を張り上げる場面が印象的です。
字幕で「ラ・ラ・ランド」や「最強のふたり」などあまり関係のない作品を引き合いに出し過ぎな部分もありますが、全体として作品の魅力を上手く伝えられている良い予告だと思います。
読んでいただきありがとうございました。