「鈴木家の嘘」予告 / 多様な感情を印象的に切り取る人間ドラマ予告
映画予告編の魅力について語っていきます。
今回は「鈴木家の嘘」(2018)の予告をご紹介します。
「ぐるりのこと。」や「恋人たち」を手掛けた橋口亮輔監督の助監督を務めていた野尻克己の初監督作品です。
『鈴木家の嘘』90秒予告
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○多様な感情を印象的に切り取る人間ドラマ予告
記憶を失った母に対して、長男の死を隠すために奔走する家族の様子が初めに描かれます。この部分はコメディタッチで描かれていて、予告でも伝わるような面白いシーンが切り取られています。エキストラで雇った浩一の友達の芝居が絶妙に白々しくて、こんな一瞬のシーンでもちゃんと笑えます。
後半は一転してしっとりとした雰囲気になり、鈴木家の人間関係について描かれます。
バックで流れているのは「ぐるりのこと。」、「恋人たち」でも主題歌を担当したAkeboshiの”点と線”です。相変わらずAkeboshiの歌は人間ドラマによく合います。
後半になって、長男の死について何か理由があったことが示唆されます。印象的な台詞、場面が続きますが、具体的な内容は本編のためにちゃんと隠してあります。
予告編全体を通して、生前の長男を含めた家族4人のそれぞれ良いシーンが抜き出されているのが、丁寧な演出だと思います。
ストーリーを通して登場人物たちの感情はかなり揺れ動いていますが、それでも父の
「あいつ、生きてたんだな」
という台詞を終盤に持ってくることで、ただ悲しいだけの物語じゃないことを伝えています。川辺で佇む3人の画がとても暖かい印象を与えます。
最後の最後に家族そろって家に帰るシーンを入れているのも、作った人のこだわりを感じます。
面白さもあり、切なさもあり、ちゃんと大事な部分は隠して本編への興味を引く工夫もありで、割と誰が見ても良いと言う予告編ではないでしょうか。
読んでいただきありがとうございました。