「アルゴ」予告 / 荒唐無稽な設定をテンポよく見事に表現
映画予告編の魅力について語っていきます。
今回は「アルゴ」(2012)の予告をご紹介します。
実際に起きたイランでのアメリカ大使館人質事件を基にした作品。ベン・アフレックが監督と主演を兼任し、その年のアカデミー賞作品賞を獲得しました。
映画『アルゴ』予告編1【HD】 2012年10月26日公開
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○荒唐無稽な設定をテンポよく見事に表現
反米デモ隊の目をかいくぐってイランからアメリカ人6人を救出しなければならないという緊迫した状況の中で、架空のSF映画をでっち上げるという荒唐無稽な作戦が実行されたというギャップが本作の特徴で、予告ではこの部分を丁寧に描くことで本作の魅力を完璧に表現しています。
まずイランでの状況が説明され、CIAが困難な救出任務を引き受けるまでは、音楽、効果音、テロップすべてが深刻な情勢を伝えるために選び組み込まれています。
次にニセ映画作戦のパートになると一転、軽快な音楽に代わり、テンポよく準備が進んでいく様子が描かれます。
監督役の台詞は一言ですが、この一言で彼の役割や人柄が一気に伝わってきます。
最後のパートでは、いよいよ作戦が実行されますが、徐々に綻びが生じ、彼らが危険にさらされてしまいます。その様子を、エアロスミスの”Dream On”に乗せて緊張感たっぷりに描いています。予告のこの部分だけでも、かなりハラハラさせられる出来になっています。もちろん、本編のクライマックスはもっともっと手に汗握る展開を見せてくれます。
○ラストカットの選び方も絶妙
洋画でも邦画でも、予告編の最後の最後に、ちょっと笑えるシーンを入れるのが常套手段になっています(これのチョイスが下手なせいで全体が台無しになっている作品もまれにあります)。
今回も似たような手法を用いてますが、シーンの選び方が絶妙で、緊迫した状況の中で突拍子もない作戦を実行するという作品全体の筋をワンシーンで表現できているように思います。
ちなみに後半で流れたエアロスミスの”Dream On”ですが、イルミネーション制作のアニメ映画「SING/シング」の予告でも使われています。かなり有名な曲のようですね。
映画『SING/シング』予告編
読んでいただきありがとうございました。