「アヒルと鴨のコインロッカー」予告 / 予告全体をボブ・ディランの歌声が優しく包み込む
映画予告編の魅力について語っていきます。
今回は「アヒルと鴨のコインロッカー」(2007)の予告をご紹介します。
伊坂幸太郎による同名小説の映画化作品です。
アヒルと鴨のコインロッカー(プレビュー)
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○予告全体をボブ・ディランの歌声が優しく包み込む
物語の鍵となるBob Dylanの” Blowin' in the Wind”が予告全体で流れています。ストーリーとしては悲しい場面もある話ですが、ボブ・ディランの優しい歌声とギターの音色によって、予告全体がこの上なく軽やかな印象を持ちます。この点が本作特有の魅力といえるでしょう。主演となる瑛太のどこか気の抜けたしゃべり方も、軽やかなイメージの一端となっているかもしれません。
Bob Dylan - Blowin' in the Wind (Audio)
「神さま、
この話だけは、
見ないでほしい。」
という字幕から始まります。この作品にぴったりの良い導入だなと思います。
ボブ・ディラン、本屋襲撃、ブータン人、広辞苑と広辞林、神さま、アヒルと鴨、といったキーワードが出てきますが、この予告を見ただけでは何がどことつながっているのかわからないでしょう。登場人物の説明も詳しくはせず、本編のシーンを短く繋ぎ合わせた構成となっています。ストーリーの詳細は分からないけど、何か面白そう、観てみたい、と思わせる予告ではないでしょうか。
瑛太が車の中で声を上げるシーンが、ボブ・ディランの穏やかな曲と対照的で印象に残ります。
タイトルロゴが出て、曲も途切れ、予告が終わるかと思いきや、今度は濱田岳が歌う” Blowin' in the Wind”が聞こえてきて、主人公二人が出会うシーンが最後に流れます。「偶然の出会い」が大きな意味を持つ本作に対して、良い予告の終わり方だと思います。
本編を観てから改めてこの予告を観れば、いろいろなことが分かって初見のときよりも楽しめるかもしれません。
読んでいただきありがとうございました。