「インスペクション ここで生きる」予告 / 作品に寄り添う静謐な予告
映画予告編の魅力について語っていきます。
今回は「インスペクション ここで生きる」(2022)の予告をご紹介します。ゲイであることを隠し海兵隊に入隊した監督自身の物語です。
【8月4日(金)公開】『インスペクション ここで生きる』本予告
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〇作品に寄り添う静謐な予告
作品の魅力を丁寧に汲み取って伝えている素晴らしい予告だと思います。派手なアクションシーンがないヒューマンドラマ系の作品の予告は本編のあらすじを紹介するだけになってしまいがちですが、この予告は胸打つ台詞を効果的に演出することでそれ以上の役割を果たせています。
前半では入隊の経緯が描かれますが、感情を押し殺したような主人公の表情が印象的です。
中盤の台詞で、彼が海兵隊へ入隊した切実な思いが明かされます。ここは本編でもおそらく重要な場面だと思いますが、なぜ入隊したのかという動機を明らかにすることで彼の人間性が一気に伝わりやすくなるので、予告に入れて正解ではないでしょうか。
本編ではゲイであることへの偏見に晒されて苦悩する描写もあると思いますが、予告で過度にそのような描写を盛り込むのではなく、彼と真摯に向き合って海兵隊としての心得を説く上官の台詞を挿入することで、観てる人も作品の中に希望を見出すことができます。
予告で使われている楽曲はserpentwithfeetによる” The Hands”です。美しい歌声と独特な音階が特徴的で、作品に対するイメージを的確に肉付けしています。
The Hands (From the Original Motion Picture “The Inspection”)
読んでいただきありがとうございました。