映画予告編の魅力について語っていきます。
今回は「オールド」(2021)の予告をご紹介します。
「ミスター・ガラス」などを手掛けたM・ナイト・シャマラン監督作。砂浜のビーチを舞台にしたスリラー作品です。
人が急速に老化する奇妙なビーチ…M・ナイト・シャマラン監督『オールド』日本版予告編
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〇謎が謎を呼ぶシーンの数々から目が離せない
ジャンルとしては「ビバリウム」と同じシチュエーションスリラーに当たると思います。(シチュエーションスリラーの定義もよくわかりませんが…。そもそもちゃんと認知されている言葉なんでしょうか)
この手の作品の巨匠であるシャマラン監督の最新作ですから、面白くないはずがありません。予告も通常より長めに作って、期待を裏切らない作品であることを見せつけてくれました。
序盤はリゾート地に来た主人公家族の様子が描かれます。楽しげな雰囲気ですが、今作の重要なテーマである「時間」についての台詞を散りばめて伏線を張っています。
舞台となるビーチに着いてからは、BGMが時計の音のようなものに変わります。
テーマに即したBGMを上手く使っていて、この予告に独自のイメージを与えています。
時計の音に合わせて字幕の文字が傾く演出も、細かいですが上手いなと思います。
その後砂浜で次々と恐ろしい現象が起こります。
遺体の発見、遺体の腐敗、子供たちの急激な成長という現象をかなり時間をかけて描くことで、「異常な速さで時間が進む」という今作で最も重要な仕掛けを丁寧に印象付けています。
後半では衝撃的なシーンが次々と畳みかけられます。
予告を観ただけではよくわからない(時間が早く進むということだけでは説明がつかない)場面もいくつか入れることで俄然作品に対して興味がわきます。
妊娠して急激におなかが大きくなる女性とそれを拒むように逃げる母親。
疑心暗鬼になりお互いを疑い始める登場人物たち。
何かの手がかりを示す暗号。
蝕まれたように体が黒ずんでいく男性。
「これは始まりに過ぎないのか…」
という台詞、シンプルですがこの作品の奥行きを示しており良い役割を果たしていると思います。
ただ、この予告で上手いと思う点は、「このビーチから離れると意識を失う」という仕掛けについてはっきり説明することで、「なんで逃げないの?」という我々の疑問を解消しているところです。さらに、ただ説明するだけではなく、崖を上って逃げ出そうとしている途中で気を失うという恐ろしい場面を入れてしっかりインパクトを残しています。
音楽が止んで時計の音だけになるところはかなり怖い演出です。一瞬だけ映る激しく痙攣する女性が特に怖くて、一番印象に残っています。
最後に洞窟のような場所で二人が何かから逃げ惑う描写を入れるのもすごいなと思います。この映画、時が速く進むという仕掛けだけかと思ってたけど、なにか化け物みたいなのも出てくるのか…?と想像が膨らみます。
作品の設定は奇抜ですが、予告は全体としてものすごく丁寧に作られている印象です。
前提となる設定についてはきちんと説明したうえで、予告だけではわからないシーンもふんだんに盛り込んで期待を煽るという、スリラー予告としてほぼ満点の仕上がりだと思います。
読んでいただきありがとうございました。