「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」予告 / 過酷なサバイバルを力強くストレートに描く
映画予告編の魅力について語っていきます。
今回は「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(2012)の予告をご紹介します。
タイトルの通り、小さなボート上で虎と漂流した少年のサバイバルを描いた作品です。
映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』予告編
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○過酷なサバイバルを力強くストレートに描く
虎と漂流するというびっくりするようなストーリーを映像と音でストレートに力強く伝えることに主眼を置いた予告で、無駄な要素がない分、本作の魅力が存分に表れています。
とはいえよく見ると、シンプルな構成ながら細かいところまで丁寧に作られているのが分かります。
導入部分も、一場面でインドの美しい情景が印象に残り、ロゴ前の船のシーンはこれから始まる冒険への期待が膨らみます。
次の場面からは、乗っていた船が大嵐に見舞われ転覆してしまう様子が描かれます。強烈な雨風と船を飲み込む大波が圧巻の映像で表現されますが、その途中に、水没した船内でシマウマとすれ違うシーンを入れることで、この作品は他の転覆ものの映画とは違った展開になっていくことを示唆します。
イルファーン・カーン演じる大人になった主人公の語りがここでも良い効果を生んでいます。
その後は虎と漂流し、ともに生き抜かなければならない少年の奮闘が描かれます。
後半は全く台詞がないですが、その分字幕で状況説明がなされます。
字幕を少しずつ区切って画面いっぱいに表示するという手法をとっていて、他の映画ならちょっとくどく感じるかもしれませんが、過酷なサバイバルを描くこの映画にはぴったりな演出じゃないかと思います。
「命を奪うのか? 希望を与えるのか?」
という文句は、この映画の一番大切な部分を端的に表現できていると思います。
使用されている楽曲はColdplayの” Paradise”です。
Coldplay - Paradise (Official Video)
やや変わった曲ですが、映像が曲に合うよう構成したり効果音を足したりすることで、曲の雰囲気が漂流の過酷さや自然の美しさを非常に引き立てています。
英語版の元の予告と見比べると、日本用にかなりデフォルメしてあるのが分かりますが、それによって本作の魅力がより伝わりやすくなっているんじゃないかと思います。
読んでいただきありがとうございました。