「アメリカン・スナイパー」予告 / 主人公の葛藤を予告内で描き切る
映画予告編の魅力について語っていきます。
今回は「アメリカン・スナイパー」(2014)の予告をご紹介します。実在したアメリカ海軍狙撃手を描いた伝記映画です。
映画『アメリカン・スナイパー』 特報 【HD】2015年2月21日公開
https://youtu.be/HkDUQN7mo1U?si=O2YPuuRdx8lP-pCs
*******
〇主人公の葛藤を予告内で描き切る
物語のワンシーンを抜群の緊迫感で印象的に描いており、しかもそのシーンを通して作品の主題を明確に伝えるという素晴らしい構成になっています。
はじめ屋上の男を監視するシーンでは、隣の兵士の口調が軽く、任務中の何気ない一場面として描かれています。後の切迫したシーンとの緩急をつけるような演出です。
続いて玄関から出てきたのは爆弾と思しきものを持った女性と子供。本当に爆弾なのか分からない状態で、彼女たちを撃つべきかという判断に迫られます。
爆弾であるのに撃たなければ部隊に甚大な被害が及んでしまうが、爆弾でないのに撃ってしまえば罪なき一般市民の命を奪うことになるというリスクの大きすぎる選択を強いられます。
前の男を監視するシーンでもこのシーンでも、軍からの指示は自分の判断で撃て、というものであり「命令されたからやむを得ず撃った」という言い訳もたたない状況で、自らの判断に伴う責任がより重くのしかかります。
葛藤の最中、彼の妻と生まれたばかりの子供の回想シーンが挿入されます。
「伝説の狙撃手」と謳われる彼ですが、この映画は戦闘での功績を称えるためのものではなく、人間としての背景や苦悩を描いているということがよく伝わってきます。
BGMや効果音も最小限であるため、場面の緊迫感がより際立っています。
読んでいただきありがとうございました。