映画予告編の悦楽

映画予告編の魅力をひたすら語っていきます!

「グッド・ナース」予告 / 予告の中でも観てる人を驚かせる凝った演出

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「グッド・ナース」(2022)の予告をご紹介します。Netflix制作の、実話をもとにしたサスペンス作品です。

 

『グッド・ナース』予告編 – Netflix

https://youtu.be/5-aiTcA5HBA

 

 

 

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〇看護師の静かな狂気を印象付ける

この予告は主演二人の演技によって、リアリティのある恐ろしさを印象付けられています。

疑いをかけられる男性看護師役はエディ・レッドメインです。「レ・ミゼラブル」や「ファンタスティック・ビースト」シリーズに出演しています。

その同僚の女性看護師役はジェシカ・チャステイン。いろいろな作品に出演していて映画賞の受賞歴も豊富ですが、私の中では「インターステラー」のマーフィー役が印象に残っています。

 

予告はカフェでの二人のやり取りから始まります。

何気ないやり取りかと思いきや、その話題になったときにエディがこちらに向けた表情にはゾクッとさせられました。

エディの中性的で清潔感のある顔が内面の狂気を際立たせているようで、見事なキャスティングだなと思います。

 

警察から、患者の死にエディが関与した可能性があることが明かされます。

 

そこからはエディの一挙手一投足が怖く見えてしまいます。

 

一人で歩いているときのなで肩で猫背な見た目が彼の内面の陰鬱さを表しているようです。

 

点滴の袋を入れ替える場面も、もしかすると普通に業務をしているだけかもしれませんが、犯行現場のように見えてしまいます。

 

エディがジェシカの家に来る場面では、子供たちの無邪気さとエディが内に秘めた恐ろしさが対照的です。

 

患者が膝から崩れ落ちる場面も一瞬ですが印象的です。この作品は派手なシーンがないので、このように動きのあるシーンを少しでも入れることで作品の緊迫感を高めているように感じます。


〇予告の中でも観てる人を驚かせる凝った演出

何といっても、この予告は最後の演出が見事だなと思います。

予告冒頭のカフェでのやり取りは、ジェシカがエディに初めて疑いを向ける場面のように見えましたが、実はジェシカは警察と無線でつながっていて、決定的な証拠をエディから引き出そうと勝負に挑む場面であったことが最後で分かります。

 

冒頭に物語の重要な場面を切り抜いた部分を描き、その後物語が進むにつれてその場面の意味が分かるようになり、クライマックスで冒頭のシーンに戻ってくるという手法を見たことがある人も多いと思います。映画や小説でよく見られるやり方ですが、これを短い予告の中でやっているのが凄いなと思います。

 

この作品は、看護師が患者に劇薬を投与して殺害するという恐ろしい事件がテーマとなっていますが、この予告ではその犯人にだけスポットを当てるのではなく、犯行を暴こうと立ち向かうジェシカのことも印象付けられているのが上手いです。最後に冒頭の場面に戻ってくるこの演出もそうですし、思い返すと予告序盤にジェシカの家族や金銭的な苦境を描いているのも効果的だと思います。

 

ただ実際にあった事件を紹介するだけの作品ではなく、映画としての登場人物やストーリーもきっちり描かれた作品だということを伝えられている素晴らしい予告だと思います。

 

読んでいただきありがとうございました。