【番外編】「ダーク・ユニバース」 / 予告だけが残った幻の企画
いつもは映画の予告編を紹介していますが、今回は番外編です。
ユニバーサル・ピクチャーズが手掛けた過去のモンスター映画を共通の世界線でリメイクさせる「ダーク・ユニバース」という企画の予告映像です。
この企画は結局、いろいろあって1作目で立ち消えとなってしまいました。
「ダーク・ユニバース」特別映像
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「リターン・トゥ・シネマ」でユニバーサル作品について書いたので、ついでにダーク・ユニバース計画についても紹介したいと思います。
なにせこの企画は予告しかないので、このブログで紹介して風化させないようにしたいです。
ユニバーサルはモノクロ映画の時代からドラキュラやフランケンシュタインなど怪物を題材にしたホラー映画の名作を多く制作してきました。
それら怪物映画のクラシックを現代に蘇らせ、一つの世界線(ユニバース)を共有させるという壮大な計画が2014年に立ち上げられました。
●近年盛んに展開される「○○ユニバース」
同じ世界線を共有しているという設定で異なる複数の作品を構築する「○○ユニバース」という手法は、最近様々な題材で実現されています。
アメコミを原作とするマーベル・シネマティック・ユニバースやDCエクステンデッド・ユニバースは今まででは考えられなかった規模で展開し、興行的にもおおむね成功を収めています。
他にもキングコングとゴジラの対立を描いたモンスター・バースや、M・ナイト・シャマラン監督が「ミスター・ガラス」で19年越しに自らの作品を2つクロスオーバーさせたシャマラン・ユニバースがあります。
スピンオフや前日譚なども含めるとすると、「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」なども大きなユニバースを築いているといえるでしょう。
昨今、各種配信サービスの充実により映画だけでなくドラマシリーズやアニメ作品への展開も可能になってきており、今後ますます色々なユニバースが生まれていくことでしょう。
○大々的に発表された「ダーク・ユニバース」計画
「ダーク・ユニバース」も、計画発表時に大きな注目を集めました。
ユニバース作品は、やはりMCUを代表とするヒーロー映画のイメージが強いため、このような恐ろしいモンスターたちのユニバースは画期的で魅力的に感じました。
具体的には、「ミイラ再生」(1932)、「透明人間」(1933)、「魔人ドラキュラ」(1931)、「フランケンシュタインの花嫁」(1935)、「大アマゾンの半魚人」(1954)という5つの作品をリメイクする予定で、予告にはそれぞれの映像が使われています。
クラシックホラーの映像とバックで流れている壮大な音楽の組み合わせが、とても良い味を出しているなと思います。
音楽が盛り上がるところで、透明人間が包帯をはがしていくシーンが印象的です。
「フランケンシュタインの花嫁」から、” To a new world of gods and monsters!”と乾杯するプレトリアス博士のシーンが最後に使われています。ダークユニバースの幕開けを高らかに宣言するようです。
モノクロの映像が続いた後、お馴染みのユニバーサルのロゴをアレンジしたダークユニバースのロゴが現れます。歴史を感じさせるかっこいい演出だと思います。
各作品のキャストには本当に豪華な面々が決定していました。「ミイラ再生」にはトム・クルーズ、「透明人間」にはジョニー・デップ、「フランケンシュタインの花嫁」にはハビエル・バルデムとアンジェリーナ・ジョリーが出演し、ユニバースのまとめ役としてラッセル・クロウが出演予定でした。キャストたちの豪華な集合写真も公開され、映画ファンからの期待も高まっていたと思います。
○幻となったダーク・ユニバース計画
しかし、「ダーク・ユニバース」計画は結局実現することはありませんでした。
誤算だったのは、1作目の「ミイラ再生」のリメイク作である「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」(2017)が興行的にも批評的にも失敗してしまったことです。これを受けて計画の軌道修正を余儀なくされ、参加していた脚本家やディレクターも降板することとなってしまったため、ユニバース化の計画は立ち消えとなってしまいました。
ユニバース構想はなくなりましたが、往年のモンスターホラーを現代風にリメイクさせるという企画そのものがなくなったわけではなく、それぞれの作品を独立させて制作する方向に切り替えられました。2020年に公開されたリメイク版の「透明人間」は高い評価を受けています。
ドラキュラやフランケンシュタインのユニバースはぜひ観てみたかったですが、企画のコンセプトを残しながら各作品がリメイクされていけば良いなと思います。
読んでいただきありがとうございました。