映画予告編の悦楽

映画予告編の魅力をひたすら語っていきます!

「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」予告 / 爆発的な熱量で描かれる二人

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」(2021)の予告をご紹介します。

1960年代から70年代にかけてアメリカで黒人解放運動を展開した政治組織「ブラックパンサー党」についての物語です。

 

DVD/デジタル【予告編】『ユダ& ブラック・メシア 裏切りの代償』9.3レンタル開始 / 2022.1.5デジタル配信開始

https://youtu.be/1qRGZuc1y00

 

 

 

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3つほど番外編が続きましたが、今回は通常の映画予告を紹介したいと思います。

 

 

●史実に基づく作品を観るときは…

史実に基づく作品の場合、出来事や結末は観る側も当然事前に知っているという前提で予告やあらすじが作られます。

しかし、特に他国の歴史については知らないことも多いので、観てる途中で「そうなるのか!」と初めて知ることもたまにあります。

以下も史実は既知として書かせていただきますのでご了承ください。

(作り手も知ってるものとして映画を作っているので、事前に予習した方がより楽しめるつくりになっていることもあります)

 

〇爆発的な熱量で描かれる指導者と内通者

ブラックパンサー党は、アメリカでマルコム・Xやキング牧師が暗殺された後に活動を開始し、その過激なやり方から警察やFBIとしばしば激しい衝突があったようです。

この映画は1971年に実行された指導者フレッド・ハンプトンの暗殺について描かれているのですが、そこには内通者であるウィリアム・オニールの存在が大きくかかわっていました。

 

この予告はハンプトンたちが自由を求めて奮闘する姿と、オニールが板挟みになり揺れ動く姿を並行して描いており、どちらも上手に盛り込んで本編の魅力を伝えている素晴らしい出来となっております。

 

序盤は、ブラックパンサー党の集会でハンプトンが党員を鼓舞する場面から入りますが、途中で警官と目くばせをするオニールの姿が映ります。悪そうな警官の顔と、おびえるように揺れ動くオニールの目つきがすべてを物語っているようで、導入として素晴らしい切り取り方だと思います。

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警察署で警官と取引をするシーンでも二人の演技のおかげで状況がよくわかるようになっています。

顔の傷は、逃走中に負傷したのか、それとも拷問を受けたのか…。

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その後、激化する闘争が臨場感をもって描かれます。

「解放者は殺せても、解放運動は殺せない」

「革命家は殺せても、革命は殺せない」

「自由の戦士は殺せても、自由は殺せない」

ハンプトンの語気の強い台詞が本当にかっこいいです。

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ハンプトンについても、勇ましく党を率いる姿だけでなく、奉仕活動をしたり家族と愛し合う姿も挿入することで人間性を感じることができます。

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音楽が盛り上がるところに、序盤から繰り返されてきた”I am revolutionary”という台詞と建物の爆破シーンを重ねる演出には思わず見入ってしまいました。

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妻が涙を流しながらも毅然とした表情で喝采を送る場面も印象的です。

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このパートでも警察と党の間で揺れ動くオニールの姿が描かれています。

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そして何かを決心したように武器を捨てて歩き出すオニール。

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テンポよく描いているおかげで情報量が多く、指導者ハンプトンと内通者オニールをどちらも印象的に描けているのが見事だと思います。

 

音楽についても凝っていて、前半ではローテンポで進む音楽が警官とオニールの内密なやり取りを表現していますが、後半では同じ音楽がテンポアップし音も足されることで党の激しい奮闘を盛り上げています。

 

黒い背景で字幕やロゴが少しぶれる演出もオニールの内通者としての心情を上手く表現できていると思います。

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この作品、アカデミー賞助演男優賞と主題歌賞を受賞するなどかなり注目されましたが、残念ながら日本では公開されず2021年の9月にようやくDVDレンタルが開始されます。

レンタルになったらすぐ観ようと思います。

 

読んでいただきありがとうございました。