映画予告編の悦楽

映画予告編の魅力をひたすら語っていきます!

「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」予告 / 作品の方向性を堂々と表明するMCU予告

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバ」(2022)の予告をご紹介します。2018年に公開されたMCU作品「ブラックパンサー」の続編です。

"Marvel Studios Celebrates The Movies"の記事でも触れましたが、ブラックパンサー(ティ・チャラ国王)役で主演を務めたチャドウィック・ボーズマンは2020年に43歳の若さで逝去しました。今回の「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」では、ティ・チャラ亡き後のワカンダ国が描かれます。

 

Marvel Studios’ Black Panther: Wakanda Forever | Official Teaser

https://youtu.be/RlOB3UALvrQ

 

 

 

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アメリカで爆発的なヒットを記録した「ブラックパンサー」は早い段階で続編の制作が決定していましたが、その後主演俳優の逝去を受けてどのような形になるのか、非常に注目されました。ティ・チャラの代役を立てるのではなく、彼が亡き後のワカンダを描くということは事前に周知されていましたが、ようやく予告が公開されました。この予告は2022年7月のコミコン(アメリカのサンディエゴで開催される大規模なコミック・映画のイベント)で発表され大きな反響を呼びました。

 

〇作品の方向性を堂々と表明するMCU予告

冒頭ではティ・チャラの母であるラモンダや妹のシュリなど、主要キャストが悲しみに暮れる様子を描きます。実世界でチャドウィック・ボーズマンを失った我々の感情とリンクします。予告全体として台詞が少ないですが、彼女たちの遠くを見る表情がすべてを物語っているようです。

 

マーベルスタジオのロゴが現れる場面では、全員白い民族衣装をまとっています。ティ・チャラ国王を追悼する儀式なのでしょうか。相変わらず民族的な要素を印象的な画に落とし込むのが上手いです。

 

夫であるティ・チャカ前国王と、息子のティ・チャラを失ったラモンダの悲痛な叫びが響きます。


ただ、BGMがアップテンポになってからは激しい戦闘シーンやシュリとナキアが笑顔で挨拶するシーンなどを交えることで、全体として湿っぽくせず作品としての期待度を上げるようバランスがとられています。

 

また、新たな登場人物の存在も示唆されています。海で生まれ育ったこの人物は何者なのか…。海を舞台にした美麗な映像も目を引きます。

 

ジャバリ族のエムバクも前作に引き続き登場します。暴れん坊の彼の沈痛な表情が印象に残ります。

 

クライマックスに向けての音楽の盛り上がりと映像が合っていてとても格好良いです。

 

ラストカットではお馴染みのブラックパンサーのスーツに身を包んだ人物も登場します。引継ぐのは誰なのでしょうか。我々の知る人物か、それとも…

 

最後に囁くような声でタイトルの「ワカンダ・フォーエバー」が読み上げられます。

これは今まで劇中でティ・チャラ王が大事な時に士気を挙げるための台詞でしたが、今回は女性の囁くような声だったので意外性がありました。今作にふさわしいしめくくりではないでしょうか。

 

〇前作の予告に引き続きこだわりを感じるBGMの選曲

バックで流れる音楽についても、良く作りこまれているなと思います。台詞が少ない分、曲がその歌詞まで際立って聞こえてきます。

前半は”No Woman, No Cry”という曲でBob Marleyの原曲をナイジェリアの歌手Temsがカバーしたものになります。悲しみを大きく包み込むような曲で、穏やかな歌声は海の映像ともよく合います。

 

Tems - No Woman No Cry (From "Black Panther: Wakanda Forever Prologue")

https://youtu.be/8H4nU6i7IZM

 

後半からはKendrick Lamarの”Alright”というよりアップテンポな曲が使われています。

 

Kendrick Lamar - Alright (Official Music Video)

https://youtu.be/Z-48u_uWMHY

 

ただ、単に前半から後半へ曲が切り替わるのではなく、”No Woman, No Cry”の”Everything's going to be alright”という歌詞の繰り返しに、”Alright”の”Nigga, we gon’ be alright”という歌詞を重ねていくという独特な使い方がされています。それぞれの曲調、メッセージがマッシュアップされているように感じます。

 

 

●あの作品との共通点

色々と盛りだくさんな予告ですが、もう一つ触れておきたいと思います。

この予告を観た人の中には、肌を青く塗った人々や海の映像を観て「なんかアバターっぽいな…」と感じた方も多いのではないでしょうか。

映画「アバター」に登場する衛星パンドラの先住民族ナヴィは青い肌が特徴で、また続編の「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」では海を舞台としたシーンが多いことが予告などで知られています。

 

特報映像『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』2022年12月劇場公開

https://youtu.be/zHcuvt8R7uU

 

思うと「ブラックパンサー」と「アバター」は舞台設定は大きく異なりますが、【自然と調和して暮らす民族】×【先端技術】というモチーフはかなり近いものがあり、親和性は大きいのかもしれません。

 

制作側がどの程度お互いを意識しているのかはわかりませんが、「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」の公開日は2022年11月11日で、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の全米公開日は同年の12月16日ととても近いので、それぞれどのようにテーマにアプローチして、どのようなストーリー、映像を見せてくれるのか今から楽しみです。

 

読んでいただきありがとうございました。