「イニシェリン島の精霊」予告 / 作品の印象を決定づけるシリアスさの線引き
映画予告編の魅力について語っていきます。
今回は「イニシェリン島の精霊」(2022)の予告をご紹介します。アイルランドの孤島で暮らす二人の男を描いた作品です。
『イニシェリン島の精霊』予告編│2023年1月27日(金)公開!
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〇作品の印象を決定づけるシリアスさの線引き
派手さはないですが、作風に合うように作られた渋くて良い予告だと思います。全体的に孤島がもたらす閉塞的な雰囲気が良い味を出しています。
コルムから絶縁を告げられパードリックが困惑する序盤のパートは、周りの島民たちの反応も含めて軽めに描かれています。
ですが中盤からBGMが荘厳な雰囲気に変わり、コルムは次に話しかけたら自分の指を切り落とすと脅します。コルムが本気であることを示すこの台詞が予告の中でターニングポイントになっているように思います。
酒場にいる人たちのリアクションも先ほどとは違って深刻なものになっています。
後半ではBGMがカントリー調の音楽に変わります。予告全体で3種のBGMが使用されていますが、無駄がなくそれぞれきちんと役割を持っているように感じます。
懺悔室のようなところで、コルムの
「それは罪じゃないですよね?」という問いに対し、
「罪ではないが 善でもない」と神父が返答します。
思わずコルムの真意が気になる、引きの強い演出です。
終盤では物を投げたり人を殴ったりする場面が畳みかけられ、視覚的にも聴覚的にも予告の山場を演出しています。
最後の二人の掛け合いがシンプルですが本当に格好良いです。
「もうやめよう」というコルムの言葉に対して、予告内では困惑する描写の多かったパードリックが、
「いや ここからが始まりだ」とここに来て初めて強い意志を見せます。
BGMも太鼓のようなリズムだけが残りより台詞が際立ちます。
タイトルロゴの背景は海に向かう二人のバックショットとなっています。
予告内で明かされている情報はかなり少なく、タイトルにもある精霊については全く触れられていませんが、情報を制限することで予告全体のミステリアスな雰囲気を形作っているように思います。
読んでいただきありがとうございました。