映画予告編の悦楽

映画予告編の魅力をひたすら語っていきます!

「恋人たち」予告 / 等身大の演技と寄り添うような楽曲で構成された邦画予告の最高峰

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「恋人たち」(2015)の予告をご紹介します。

3人の主人公を中心とした人間ドラマを描いた作品。

以前紹介した「ぐるりのこと。」の橋口亮輔が監督を務め、主題歌も引き続きAkeboshiが担当しました。

「ぐるりのこと。」に負けず劣らず、本当に心に沁みる予告となっています。こちらの方が7年新しい作品なので、画質も良いです。

 

映画『恋人たち』予告編

https://youtu.be/bCek2eHOkLQ

 

 

 

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○等身大の演技と寄り添うような楽曲で構成された邦画予告の最高峰

初めに主人公3人の日常生活について描かれます。

特に成嶋瞳子演じるパートで働く主婦の、家でのシーンと弁当屋でのシーンが、とてもリアルに日常の閉塞感を上手く表現できています。どちらも一瞬のシーンですが、彼女が置かれている状況を見事に伝えられていると思います。

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そして中盤で、主人公の一人である篠塚アツシの過去について語られます。 

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絶望に襲われ、生活もままならなくなった篠塚は、3年たった今も犯人に対してぶつけようのない憎悪を抱いていますが、先輩の黒田の素直で寄り添うような言葉に心を動かされます。

この作品の登場人物は、多くがアマチュアの俳優であり、それ故にこの場面のような素朴で実直な演技が生まれたのかなと思います。

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「飲み込めない思いを、飲み込みながら

それでも人は、生きていく」

この映画のテーマがストレートに言葉で表されます。タイミングもよく考えられており、電話を切られて立ち尽くす四ノ宮のやるせなさを際立たせます。

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この予告では3人の主人公の物語が一つの軸に収められていますが、実はそれぞれ異なる出発点を持ち、異なる方向に進んでいくことが分かります。

弁当屋で働く高橋は、平凡で退屈な日々を送っていたが、ある男との出会いから人生が変化していき、

弁護士の四ノ宮は、上手く回っていた日常から、ある出来事をきっかけに歯車が狂いだし、

橋梁点検業の篠塚は、3年前のトラウマから抜け出せずにいたが、人々との交流を通して少しずつ前を向いていく。

3人が異なるストーリーを持つからこそ、「それでも人は、生きていく」という主題が鮮明に伝わってきます。

 

そして最後は、篠塚の仕事中の一場面で締めくくられます。この部分も、大げさでなく、それでも前向きに生きていこうとする彼の姿勢を表現できていると思います。

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後半で流れる主題歌はAkeboshiの”Usual life”です。「ぐるりのこと。」の”Peruna”もそうですが、本当に物語のいろんな面を引き出してくれる曲だなと思います。異なる3人のストーリーが並走する本作と見事に調和し、全体を包み込んでいるように感じます。

 

また予告の最初に、時間を割いて監督が伝えたかったことを文章で示していますが、この演出も実直にテーマを伝えようとする本作にふさわしいと思います。

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個人的に邦画の予告の中では最高の作品だと思っています。

 

読んでいただきありがとうございました。

「華麗なるギャツビー」予告 / とてつもない完成度を誇る名作予告

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「華麗なるギャツビー」(2013)の予告をご紹介します。

小説「グレート・ギャツビー」の映画化作品です。主演はレオナルド・ディカプリオ

 

この予告は最も好きな作品の一つで、以前紹介した「ダークナイト ライジング」と並んで私の中での2トップです。

いくつかバージョンがありますが、ぜひ下の予告編第3弾を観ていただきたいです。

 

映画『華麗なるギャツビー』予告編第3

https://youtu.be/ejl5-Win7VM

 

 

 

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○とてつもない完成度を誇る名作予告

最初のパートでは、ジョエル・エドガートン演じるトム・ブキャナンの台詞を通して、主人公ギャツビーのゴージャスでミステリアスな生活について語られます。このパートではギャツビーは謎多き男として描かれ、トムに正体を問い詰められても一切表情を崩しません。BGMBeyoncéAndré 3000による”Back to Black"

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そんなギャツビーですが、トムに生まれや身分について侮辱されると、一転して激高し、トムに殴り掛かります。

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その後、ギャツビーの過去について紐解かれます。自分とは身分の違う女性に恋をして、彼女を手に入れるために今の地位まで上り詰めたことが示唆されます。バックで流れているのはLana Del Rey"Young and Beautiful"という曲で、ロマンチックながらもとても切ない雰囲気によく合います。

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そして最後のパートでは、Florence and the Machine" Over the Love "という曲に乗せて、今まで冷静だった登場人物たちが感情を爆発させる場面が次々と流れ込んできます。この部分は、歯車が狂い始め物語が展開していく様と重厚な音楽が完全に調和していて、数ある予告の中でも屈指の名場面・名演出だと思います。

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It had gone beyond her.

It had gone beyond everything.

この台詞が、ギャツビーが暴走していく様子を端的に表現していてとても効果的だと思います。

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トビー・マグワイアが声を荒げるシーン、映るのは一瞬ですがとても印象的です。

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そして最後に、音楽の伴奏が止み、ギャツビーの言葉で締めくくられます。

My life has got to be like this.

It’s got to keep going on.

地位や財産を手に入れても、なお孤独に上り続けていくしかない彼の生涯が最後に印象付けられます。他の予告にはない後味です。

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この「華麗なるギャツビー」は作中の音楽に力を入れていて、Jay-Zがプロデューサーを務めたサウンドトラックはとても聴きごたえがあります。

著名なアーティストによる素晴らしい楽曲が予告でもふんだんに使われており、作品の完成度を極限まで高めています。

 

この予告は、約2分半の中でテイストが何度も変わる作りになっていて、普通ならまとまりのない感じになってしまうところですが、出演者の演技力と、効果的に場面を切り取る巧みな構成、そして各パートとそれぞれ調和する音楽によって、多大な情報量を上手く観てる側に伝えられていると思います。

 

この映画は何年も前に公開された作品でありDVDや配信サービスでいつでも観られるので、予告編をわざわざ観る人はあまりいないかもしれませんが、これは予告編単体でも素晴らしい作品に仕上がっているので、本編を鑑賞済みの方もそうでない方もぜひ多くの人に観てもらいたいです。

 

読んでいただきありがとうございました。

「LIFE!」予告 / 観る者に問いかける身近で壮大な予告

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「LIFE!」(2013)の予告をご紹介します。

ベン・スティラー演じる主人公が人生を変える旅に出る物語です。

 

映画『LIFE!』予告編

https://youtu.be/tiuAT12-534

 

 

 

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○観る者に問いかける身近で壮大な予告

前半と後半で温度差が大きい予告といえるでしょう。

前半はどこかパッとせず、空想に耽りがちな主人公を描きながら、こちらへの問いかけも入っており、観てる側は主人公と自分を重ねてしまいます。

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後半では一転して、空想を現実にする旅に出る主人公を臨場感たっぷりの映像とともに描きます。バックで流れているのはJosé Gonzálezの” Step Out”という曲で、冒険の爽快感を存分に引き出しています。個人的に予告編で使われている楽曲の中でもかなり好きな曲です。

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また、主人公の冒険を描くうえで、壮大な自然の風景だけでなく、現地の人々との交流も効果的に挿入されているのがとても良い演出だと思います。

顔に木の枝を当てられたときの顔が何とも言えず面白いです。

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ここでは主人公が空想に耽る前半と実際に冒険に出かける後半、といふうに分けて紹介しましたが、予告編の中では冒険へと走り出すシーンで主人公が雑誌の表紙を飾っていたり、道中で鳥の群れが好意を寄せる女性の顔の形を描いたりと、空想パートと現実パートの区別をはっきり分けていないような部分もあり、そのおかげで本作の魅力を全く損なわず伝えられているような気がします。

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「この映画の主人公は、あなたです」

 

ややありふれた文句ではありますが、この予告は主人公に親近感を抱けるようとても丁寧に作られており、最後のこのナレーションはすごく腑に落ちる感じがします。

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ちなみに上で紹介したURLの動画は2分程ですが、もっと長い6分超のバージョンも作られています。出演者や制作者のインタビューを交えた予告で長いものはたまに見ますが、純粋にほとんど本編映像だけで6分の予告というのは異例です。”《人生が変わる》6分間予告篇”というタイトルもかなり端的に表現できていていいなと思います。

 

映画「LIFE!」 《人生が変わる》6分間予告篇

https://youtu.be/xN0Q6A-7I_M

 

2分の予告が気に入った方はぜひこのバージョンもご覧になってください(そしてもちろん、本編も観てみてください!)。

 

読んでいただきありがとうございました。

「インターステラー」予告 / 作品の詳細は伏せたまま興味を駆り立てるティザー予告

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「インターステラー」(2014)の予告をご紹介します。

ダークナイト ライジング」、「メメント」の監督、クリストファー・ノーランによるSF作品です。相変わらずノーラン監督は良い予告編を作ります。

 

ノーラン監督最新作!映画『インターステラー』特報

https://youtu.be/mpdpqIJy798

 

 

 

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 ○作品の詳細は伏せたまま興味を駆り立てるティザー予告

前回がだいぶ濃い作品だったので、今回はちょっと情報量少なめの予告です。

パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」と同様に、これは本予告の前に発表されるティザー予告で、作品の具体的な内容にはほとんど触れていません。でも、何だか分からないけど期待を膨らませられる予告編です。

 

予告としては異例ですが、尺の大部分が本編とは関係のない映像で構成されています。

今までの歴史で人類が生み出してきたもの、克服してきたことについて、ナレーションとともに映像が流れます。おそらくすべて実際の映像だと思います。

0:52で出てくるおじさんの仕草がなぜかお気に入りです。

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後半になると、作品内ではより大きな試練に直面していて、人類の運命をかけて挑戦しなければならないと説明されます。

この部分、ナレーションとかなり違う内容の字幕がついている気がしますが、この字幕の言葉選びはかなり好きです。

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そして最後、ロケットが打ちあがった空にタイトルが浮かび上がります。タイトルロゴの演出は、「ブラックパンサー」が一番気に入っていると言いましたが、このインターステラーのロゴの演出も、すごくシンプルですが壮大な音楽も相まって、本編への期待を膨らませる素晴らしい仕上がりだと思います。

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読んでいただきありがとうございました。

「ぐるりのこと。」予告 / 大げさでないけど心に残る、邦画予告の名作

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「ぐるりのこと。」(2008)の予告をご紹介します。

1990年代の日本を舞台に、ある夫婦の物語を描いた作品です。

 

ぐるりのこと。(プレビュー)

https://youtu.be/46SDOonX4y0

 

 

 

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○大げさでないけど心に残る、邦画予告の名作

今まで紹介してきた中で初の邦画予告編となります。

個人的な意見ですが、邦画の予告編は傾向として、定型にはまったものが多く印象に残りづらいイメージがあります。

 

ですが、この「ぐるりのこと。」の予告編は、とても気に入っていて何度も観ている作品なので、ぜひ紹介したいです。

 

この予告編では、10年という長い月日の中で、変化していく夫婦の感情と関係性を、この映画の主題歌である、Akeboshi”Peruna”がすべて引き出しています。

この映画のために書き下ろした楽曲ではないらしいですが、予告編を観た後だと「ぐるりのこと。」の主題歌はこの曲しかありえないと思ってしまいます。

 

初めのパートでは、結婚する二人と周囲の反応について描かれています。しっかり者の妻と頼りない夫という、平凡な夫婦の平和な日常を切り取っています。

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中盤では、突然襲った子供の死という苦難に対し、苦悩する二人の様子が描かれます。どのシーンも大げさでなく、少しずつ壊れていく心をリアルに表現しています。

法廷画家である夫の仕事風景を通して、1990年代の日本の時代背景についても描いているのがこの作品の特徴です。心に傷を負った夫は、あまりにも悲惨な事件に対して、仕事として受け入れられず葛藤します。

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それでも、最後のパートで二人は支え合って、前を向いて進んでいきます。

夫の上司を演じる柄本明

「大事にできるものがあるときは、大事にしとけよ」

という言葉が心に残ります。

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最後に出てくるこの映画のキャッチフレーズは、作品を端的に表していて、予告編の締めにふさわしい言葉だと思います。

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また主題歌の話に戻るのですが、この予告編で主題歌”Peruna”は少し変わった使われ方をしています。初めのパートで流れて、中盤ではテイストの違う曲に変わるのですが、最後のパートではまた”Peruna”が流れます。異なる場面で異なる味を引き出せるこの曲ならではの演出だと思います。

 

悲しさもたくましさも見事に表現する出演者の演技、そして物語のイメージと完璧に調和する音楽。

邦画洋画といった括りは関係なく、ずっと心に残る素晴らしい予告編です。

 

Akeboshiは、この監督の「恋人たち」という作品でも主題歌を担当しているのですが、その予告編も素晴らしい出来なのでそのうち紹介します。

 

読んでいただきありがとうございました。

「イエスタデイ」予告 / ビートルズの名曲×斬新な設定=最高に予告向きな作品

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「エスタデイ」(2019)の予告をご紹介します。

売れないミュージシャンとビートルズの楽曲にまつわる物語です。

 

映画『イエスタデイ』予告

https://youtu.be/dG0Y507ScL4

 

 

 

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ビートルズの名曲×斬新な設定=最高に予告向きな作品

主人公以外、ビートルズを忘れてしまった世界という思わず興味を引く設定と、馴染みのあるビートルズの名曲の数々。これは誰が作っても良い予告編になるであろう非常に予告編向きの作品です。

 

“Yesterday”と”Let It Be”の演奏シーンは、聴いた時の周りの反応が状況を端的に表せているなと思います。

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後半では主に”Hey Jude”がバックで流れていますが、曲が盛り上がる瞬間に大観衆が集まっている浜辺のライブ会場が映ります。曲と雰囲気がすごくマッチしていて、このシーンだけでも観る価値があります。

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あと細かいところだと、テロップやタイトルが出るときの黄色いエフェクトもかなり良い味を出しています。

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●予告編で映画の余韻を味わう

先日、この映画を映画館で鑑賞してきたのですが、観終わった後またこの予告編が観たくなりました。私は本編を観終わった後必ず予告編をもう一度観ることにしていて、手軽に余韻を味わうことができるのでおすすめです。

 

読んでいただきありがとうございました。

「ブラックパンサー」予告 / 高度に計算され尽くしたMCU予告

映画予告編の魅力について語っていきます。

 

今回は「ブラックパンサー」(2018)の予告をご紹介します。

アイアンマン、スパイダーマンなどを擁するマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第18作目。MCU初の黒人が主人公となる作品で、アメリカで爆発的なヒットを記録しました。

 

映画『ブラックパンサー』日本版予告編1

https://youtu.be/ufLrXsuspUc

 

 

 

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○高度に計算され尽くしたMCU予告

ブラックパンサーMCUの中でやや特殊な出自で、本作が初登場ではなく、2016年の「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」でお披露目となりました。

そのため単独作となるこの「ブラックパンサー」では、彼が持つ世界観が新鮮さに欠けるように映ってしまうのではないかとなんとなく心配していました。

ですが一発目に発表されたこの予告編で、そんな心配はいらないほど、ブラックパンサーとワカンダ王国がミステリアスに、魅力的に描かれているのがわかりました。もちろん、新鮮さを失わないように「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」では核心を突いた情報は意図的に隠していたのでしょう。

 

前半はたっぷり1分ほどかけて、ある男の取り調べを通してワカンダとその王であるブラックパンサーの秘密を印象付けます。

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後半になると、映像ではワカンダ国の人々や戦闘シーンを描き、ナレーションでブラックパンサーに試練が待っていることが告げられます。このパートは約30秒と短いですが、映像と音声を分けることで、テロップなどには頼らず多くの情報を伝えています。

 

終盤のブラックパンサーが車から車へ飛び乗るシーンは、本編では数ある戦闘シーンの一つなのでしょうが、ブラックパンサーの持つパワーと俊敏性をスマートに表現していて、素晴らしい切り取り方だと思います。

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その直後に現れるロゴの演出は、今まで観た中で一番カッコいい仕上がりになってます。暗闇の中で文字のエッジが光って、ゆっくり全体が浮かび上がる。音楽も相まってミステリアスで洗練された本作のイメージがここだけで十分に伝わってきます。

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通常、ひとつの予告編内でパートごとに2つか3つの音楽が使われますが、今回バックで流れているのは一曲だけです。そのおかげで全体に統一感が生まれ作品の世界観がより鮮明になっています。ヒップホップユニットRun The Jewels” Legend Has It”という曲です。

 

Run The Jewels - Legend Has It (Official Music Video From RTJ3 & Black Panther)

https://youtu.be/vWaljXUiCaE

 

この作品ではキャスト、スタッフにアフリカ系の黒人が多く起用されました。そして音楽も黒人発祥といわれるヒップホップが多く使われ、著名な黒人ラッパー、ケンドリック・ラマーによるインスパイアアルバムが制作されました。

 

ブラックパンサー」の魅力は、アフリカ系民族が持つ伝統的なイメージと、高度な文明を持つ技術先進国としての洗練されたイメージが調和しているところで、この予告でもその2つのイメージがバランスよく表れています。民族衣装をまとった人々や豊かな自然環境を画として多く見せ、技術先進国としてのイメージはRun The Jewelsによるスタイリッシュな挿入歌で強く補っています。ヒップホップといっても、昔ながらのタイプではなく、今の流行を反映した曲を選んだのもそのような狙いがあったんだと思います。

 

全体としてこの予告編は、短い尺の中でも緩急のつけ方が抜群に綺麗で、個人的に最近の中では一番気に入ってます。

 

読んでいただきありがとうございました。