映画予告編の小部屋

映画の予告編についてひたすら語っていきます!

#43 ミスター・ガラス (2019)

Mナイト・シャマランの監督作品なのですが、シャマラン監督の過去作品「アンブレイカブル(2000)と「スプリット」(2016)の登場人物たちが本作の主人公となります。

この背景を知らないとこの予告もあまり面白くないかもしれません。

 

Mナイト・シャマランの最新作『ミスター・ガラス』日本版予告編

https://youtu.be/WVcbtuFI-Jg

 

 

 

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上に書いたように本作は監督の過去2作の続編にあたるのですが、「アンブレイカブル」と「スプリット」は登場人物も扱うテーマも全然違う作品なので、それをまとめた3作目を製作すると発表されたときは、誰しも「本当に?」と驚いたと思います。

 

そんな状況の中で発表されたこの予告編ですが、序盤でさっそく過去作の登場人物3人が横並びになるシーンが入っていて、初めて見たときは否応なくテンションが上がりました。

3人に面談を行う精神科医ステイプルの不気味な雰囲気も、この序盤の見せ場に対して良い効果を生んでいると思います。

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その後はデヴィッド、イライジャ、ケビンが持つ特殊能力について描かれます。それぞれ印象的な場面が多いですが、改めて観ると、3人の会話や戦闘のシーンなど直接的に交わっている画がもっとあっても良かったかなと思います。

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最後に、イライジャの台詞とタイトルロゴが重なる演出が痺れます。

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動画のコメントを見ると、”Glass”ガラスと訳したことで音声と字幕に違和感を感じた人がいるようですが、それはまあ些細なことじゃないかと思います。

 

この映画の本編を観ていると、登場人物も特殊でストーリーも特殊なので本題のテーマを見失ってしまう瞬間が結構あったのですが、予告を見直すと何気に本編で大事なことをちゃんと強調できているんだなと気づきました。

 

読んでいただきありがとうございました。

#42 鈴木家の嘘 (2018)

#18「ぐるりのこと。」や#22「恋人たち」を手掛けた橋口亮輔監督の助監督を務めていた野尻克己の初監督作品です。

 

『鈴木家の嘘』90秒予告

https://youtu.be/HNdM5rkNBOc

 

 

 

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記憶を失った母に対して、長男の死を隠すために奔走する家族の様子が初めに描かれます。この部分はコメディタッチで描かれていて、予告でも伝わるような面白いシーンが切り取られています。エキストラで雇った浩一の友達の芝居が絶妙に白々しくて、こんな一瞬のシーンでもちゃんと笑えます。

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後半は一転してしっとりとした雰囲気になり、鈴木家の人間関係について描かれます。

バックで流れているのは#18「ぐるりのこと。」、#22「恋人たち」でも主題歌を担当したAkeboshiの”点と線”です。相変わらずAkeboshiの歌は人間ドラマによく合います。

 

後半になって、長男の死について何か理由があったことが示唆されます。印象的な台詞、場面が続きますが、具体的な内容は本編のためにちゃんと隠してあります。

予告編全体を通して、生前の長男を含めた家族4人のそれぞれ良いシーンが抜き出されているのが、丁寧で演出だと思います。

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ストーリーを通して登場人物たちの感情はかなり揺れ動いていますが、それでも父の

「あいつ、生きてたんだな」

という台詞を終盤に持ってくることで、ただ悲しいだけの物語じゃないことを伝えています。川辺で佇む3人の画がとても暖かい印象を与えます。

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最後の最後に家族そろって家に帰るシーンを入れているのも、作った人のこだわりを感じます。

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面白さもあり、切なさもあり、ちゃんと大事な部分は隠して本編への興味を引く工夫もありで、割と誰が見ても良いという予告編ではないでしょうか。

 

読んでいただきありがとうございました。

#41 モネ・ゲーム (2012)

モネの贋作をめぐるコメディ作品です。主演はコリン・ファースキャメロン・ディアス

 

モネ・ゲーム』予告編

https://youtu.be/og25duuo20U

 

 

 

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この予告はとにかくテンポよく描けているのが良いところだと思います。

 

#34「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」の予告では、主人公たちがどうやって出会ったのかを時間をとってちゃんと描いていましたが、この予告では主人公となる二人、カタブツ鑑定士と天然カウガール(どちらも初めて聞く言葉です)がどうやって出会って贋作詐欺を企てるようになったのかはほとんど描かれていません。そこもテンポ重視ということでしょう。

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偽物がばれそうになってからのコリン・ファースの言葉がキマってます。

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そして後半は、軽快な音楽が映像とマッチしていて、観ているだけでめちゃくちゃ気持ち良い仕上がりになってます。

使われているのはBreakestraの” Hit The Floor”という曲ですが、所々に効果音を挟むことで、この作品に合ったリズムを生んでいます。最後のタイトルロゴの出し方もカッコイイです。

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コリン・ファースは、数々の大作に出演している名俳優ですが、こういうコメディ作品で振り回される役も似合います。

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読んでいただきありがとうございました。

#40 007 スカイフォール (2012)

伝統あるスパイアクション映画「007」の23作目にあたる作品。ダニエル・クレイグ版のジェームズ・ボンドとしては3作目となります。

 

映画『007 スカイフォール』予告編

https://youtu.be/IIKpljEpPSA

 

 

 

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MI6エージェントのジェームズ・ボンド、ボスのM、監視役のギャレス、武器開発係のQといった主要登場人物を前半で全員魅力的に描けているのが良いポイントだなと思います。

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特にQは久しぶりの「007」登場で、長年のファンの方は嬉しかったのではないでしょうか。しかし勿体つけることなく登場させてボンドと横並びにすることで、歴代よりも若く親しみやすいQを印象付けられていると思います。

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後半になって今回の敵役のシルヴァが登場します。演じるのは#12パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」でも魅力的な悪役を演じたハビエル・バルデムです。白い髪と白いスーツが、彼が抱える憎悪、悪意と対照的です。

Qとは異なり、短い予告の中でも、部屋の奥からゆっくり近づいて最後に顔を見せる演出にすることで、只者ではないことを示します。

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シルヴァに自分の役割を聞かれて、ボンドが拘束されながらも平然と”Resurrection(生き返ること)と答えるシーンが格好良いです。前半で死地から任務に舞い戻ってきたことを時間をかけて描いていたのが効いています。

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その後はおなじみのテーマソングを聴かせながらアクションシーンを流し込みます。電車に飛び乗って袖を直すシーンなどはさすがに見せ方が上手いなと思います。

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007」シリーズは作を追うにつれて明確に物語が進んでいくわけではありません。作品ごとにテイストが違うとしても予告ではその違いが表れづらくかなり似通った仕上がりになってしまう傾向があります。そんな中でも、この「007 スカイフォール」の予告は過不足なくまとめつつキャラクターを魅力的に描けていて、完成度が頭一つ抜けているなと思ったので紹介してみました。

 

読んでいただきありがとうございました。

#39 エージェント・ウルトラ (2015)

ジェシー・アイゼンバーグ主演のアクション・コメディ映画です。

 

最強のスパイながら中身はダメ男・・・おバカでキュートなラブアクション!『エージェント・ウルトラWEB限定予告編公開!

https://youtu.be/L3aazVOylB0

 

 

 

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コンビニバイトの店員が、CIAによる極秘マインドコントロール訓練を受けたスーパーエージェントだったという面白そうな設定と、派手なアクションもありつつ笑えるコメディ要素も併せ持つバランスのおかげで、非常に予告編向きの映画だと思います。

実際この動画の再生回数は現時点で200万近くまで伸びていて、公開規模を考えると破格の数だと思います。

ちなみにYouTubeでは一つの予告でも日本の配給会社や映画紹介サイトなどさまざまなアカウントからアップされるので、再生回数が分散されて実際どれだけ見られているのか測りかねることが多いです。アップ元によって予告のアレンジがかなり違う場合もあれば、全く同じ動画があげられていることもあります。

 

さて、この予告はCIAによるマインドコントロールプログラムの説明があった後、急に主人公となる平凡な若者、マイクが映し出されます。レジで女性から暗号を吹き込まれ、覚醒するかと思いきや、マイクは何のことか全く理解できません。

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しかし知らないうちに彼の才能はアクティベートされており、暴漢二人をスプーン1本で倒してしまいます。

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この後マイクはCIAに命を狙われるのですが、徐々に自分の才能を使いこなせるようになり、次々と刺客たちを倒していきます。それでもしゃべり方や振る舞いは優男のままであり、その描写が予告においてよい緩急をつけています。

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蛍光色に照らされたマイクの顔が印象に残ります。

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シンプルに「おもしろそう!」と思える予告編です。

 

読んでいただきありがとうございました。

#38 チョコレートドーナツ (2012)

ゲイのカップルと育児放棄された障害児が、偏見の中でも一緒に暮らしていこうと努力する物語です。

 

『チョコレートドーナツ』予告編

https://youtu.be/QVWY5ETc11k

 

 

 

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本編を見ると、この予告は奇をてらうことなくとても素直に作られていることが分かります。それでも、数々の困難の中で幸せに生きようとする3人の物語と、ルディの圧巻の歌唱シーンがこの予告をいつまでも心に残る傑作にしています。

 

全体として重いストーリーなだけに、予告の初めは明るい音楽とルディの華やかなショーの場面で彩られているのはすごく良い演出だと思います。

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ルディとポールが、ダウン症を抱え親から見放された少年マルコと出会い、手探りしながらともに暮らしていく様子が描かれます。各シーンはそれぞれ短く切り取られていますが、3人の演技が本当に上手くて、日常の何気ない幸せがリアルに表現されています。

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しかし、血縁関係を持たない3人の生活は認められず、ゲイであること、障害を持っていることに対する差別や偏見もあり、マルコは2人から引き離されます。

法廷で、理解のない検事に対してルディが声を荒げる場面は胸に突き刺さります。

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その後、ルディ演じるAlan Cumming” I Shall Be Released”を熱唱する場面が流れます。予告だけでもこれが素晴らしいシーンだということが分かります。

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この曲、もともとBob Dylanの楽曲でそのカバーになりますが、「チョコレートドーナツ」のサウンドトラックで音源を聴くことができます。ボブ・ディランははぐれ者の心情を表現した楽曲が多く、この曲もそういった意味を持つ歌詞なので物語とリンクする部分が多々あります。ぜひチェックしてみてください。

 

ナレーションも、単なる状況説明にとどまらず、チョコレートドーナツ、ハッピーエンドといった本作で重要な言葉を上手に伝えています。

 

この映画、本編も鑑賞しました。素晴らしい作品だったのですが、個人的に重い映画ほど何度も観るのがはばかられてしまうので、代わりにこの予告をときどき観ることで作品の記憶を風化させずに残しています。

本編鑑賞後に観ると、ルディの歌唱シーンが余計に響くと思います。

 

読んでいただきありがとうございました。

#37 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) (2014)

マイケル・キートン演じる落ち目の俳優が復活を目指し奮闘する作品です。

 

映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』日本版予告編

https://youtu.be/_XOBBmyYNJA

 

 

 

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冒頭で主人公のリーガンが舞台へ向かって不機嫌そうに歩いていく場面、この部分だけで彼がすっかり落ちぶれてやさぐれてしまったことが伝わってきます。

本編では、すべてのシーンがワンカットで撮ったかのように編集されていますが、予告は当然、各場面を切り取っているのでその工夫がはっきりとはわかりません。ですが冒頭のこのシーンは長回しで撮っているからこそ伝わる彼の感情があると思います。

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かつてバードマンというヒーローを演じた落ち目の俳優リーガンが、新たな舞台をきっかけに再び脚光を浴びようとする様子と、周囲の冷ややかな反応が描かれます。

本作の特徴的なところは、この後普通に舞台に挑戦するのではなく、リーガンが現実と幻想のはざまに入り、かつて演じたバードマンが背後にいるかのような錯覚に陥るところです。

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ここからBGMも軽快なものに変わります。Gnarls Barkley”Crazy”という曲です。冒頭の部分で流れていたのもこの曲の別バージョンでした。

 

Gnarls Barkley - Crazy (Official Video)

https://youtu.be/-N4jf6rtyuw

 

リーガンはバードマンに勇気づけられはつらつとした表情になり、舞台にも前向きに取り組みます。

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#20の「LIFE!」もそうですが、こういった作品の予告の良いところは、各パートが現実なのか幻想なのか予告だけでは区別がつかないところです。単なる妄想かもしれないし、非現実的なことが実際に起こる映画なのかもしれない。事前情報なしではよくわかりません。でもはっきりしない分、本編に対していろいろと想像が膨らみます。

 

読んでいただきありがとうございました。